ブルジュより
子どもの頃から食べてきたパンにちなんで、店をピデと名付けました。

父はトルコからオランダへ移住し、パンの配達をしながらパン職人として働いていました。あまりに長時間働き、ベーカリーで眠ることもありました。まだオランダ語も話せない中、家族に少しでも楽な暮らしをさせるために、父はすべてを注いでいました。

数年後、父はアムステルダムに自分のベーカリーを開きました。当時、私たちはデン・ハーグに暮らしていて、父は毎晩、何が欲しいか電話で聞いてくれました。私は後ろからいつも「ピデ!」と叫んでいました。
毎朝、食卓には大きくて柔らかなピデがありました。私の希望どおりなら、ゴマはたっぷりです。家族6人で四方からちぎり、バターと卵、スジュク、蜂蜜、チーズ、オリーブと一緒に食べました。
ピデは単なるパンではありませんでした。父が私たちに愛情を注ぎ、家族をひとつにしてくれるものでした。

それから年月が経ち、今度は私自身が、鎌倉の旧交番でベーカリーを開きました。日本語は今も勉強中です。
今では、パン一つにどれほどの手間がかかるのか、そして私たちがあっという間に食べ終える姿を見た父が感じていた喜びも分かるようになりました。お客さまが翌日、時には同じ日の午後に戻ってきて、パンを食べる手が止まらなかったと話してくれると、私も同じ喜びを感じます。
だから、このベーカリーはピデという名前なのです。
